Report 共創事例
後ろから、声をかけられて。
favy・徳山正一さん × メゾネット・門田元さん
(左)株式会社favy・徳山正一さん (右)株式会社メゾネット・門田元さん
JAM BASEで起こる共創の裏側を聞いていく企画、JAMMING STORY。今回の主役は、JAM BASE1階のシェア型フードホール「re:Dine 大阪」を運営する株式会社favyの徳山正一さんと、京都・神戸でスパ・サウナ施設を運営する株式会社メゾネットの門田元さん。出会いの場所は会議室でもイベントでもなく、クラフトビールの冷蔵庫の前でした。
徳山 正一
株式会社favy SaaS Div.エンタープライズセールスGr.
2024年3月、favy入社。不動産オーナーに向けて、同社のSaaSやシェア型フードホールの導入を提案する立場。JAM BASE1階「re:Dine 大阪」の立ち上げから携わる。
株式会社favy https://favy.co.jp/
門田 元
株式会社メゾネット 取締役 兼 事業推進部 部長
東京で衣料品ブランドの運営に携わった後、2020年に関西へ。現在はメゾネットでスパ・サウナ施設の企画・ディレクション・全体監修を担う。京都「伏見 力の湯」、神戸「awa awa KOBE」を手がける。『京都湯上がりクラフトビール祭』のビアフェスの運営企画にも携わる。
株式会社メゾネット https://mezone.co.jp/
東京から来たfavy、京都から来たメゾネット
写真|re:Dine 大阪
まずは、お二人の仕事について。
門田元(以下、門田) 株式会社メゾネットで、スパとサウナの運営をしています。施設の企画やディレクション、全体の監修が私の役割です。
温浴だけでは、ないですよね。
門田 マンションも駐車場も、フットサルも野菜の直売所もやっています。温泉をローリー車で宿泊施設に届ける事業まで※1。京都の会社なので、京都でできることは何でも。温浴の拠点は2カ所です。京都の「伏見 力の湯」と、HAT神戸の「awa awa KOBE」。神戸のほうは昨年秋に全面リニューアルして、スーパー銭湯としては国内で初めて館内にクラフトビールの醸造所を入れました※2。完全個室型のプライベートサウナも設けています。
徳山正一(以下、徳山) 株式会社favyは、シェア型フードホールの運営と、モバイルオーダーやサブスクリプションといった飲食店向けのSaaSを提供している会社です。私は主に不動産オーナーさんに対して、当社のSaaSや飲食プロジェクトの導入提案をしています。
「飲食店が簡単に潰れない世界」。favyが掲げる言葉です。
徳山 飲食業は勘と経験に頼りがちな業界です。他の業界では当たり前のデータやデジタルの手法を持ち込む。その象徴がシェア型フードホールです※3。ひとつのフロアに複数の専門店が集まって、お客様はスマートフォンからテーブルのまま全店のメニューを注文できて、会計もまとめて済む。飲食店側は、キッチンを時間帯や曜日で共同利用することもできるので、出店のハードルが下がります。レストランとフードコートのいいとこ取り、と言っています。
その大阪・関西1号店が、JAM BASEの1階にあります。
徳山 JAM BASE側がもともと、1階で新しいかたちの飲食運営をしたいという意向を持たれていて、関係者の方からご紹介いただきました。当社が掲げる「IT×飲食」というコンセプトと、複数の店舗が共存しながら営業するスタイルが、JAM BASEの「ごちゃまぜ」というコンセプトに合致した。それで「re:Dine 大阪」※4をテナントとして営業させてもらっています。
門田さんがJAM BASEに来た理由は、少し違います。
門田 京都と神戸に拠点があって、家は神戸。行き来がかなりの手間で、中間の大阪で仕事をする機会が多かったんです。ただ固定の仕事場を決めていなくて、カフェで仕事をしていました。ある日、大阪で仕事を終えて、re:Dineにクラフトビールを飲みに行ったら、後ろから声をかけられた。「クラフトビール、好きなんですか」と。
声をかけたのは、徳山さんでした。
徳山 当時、クラフトビールを目的に来店されるお客様が多い時期でした。何を見て、どういう目的で来られたのか。マーケティング調査の一環として、直接お客様と会話させてもらっていて。そのお一人が門田さんだった、という経緯です。
門田 かなり鮮明に覚えています。後ろからでしたね、確か。私はクラフトビールのフェスの運営企画もやっているので、話が弾んで。そこで、上にシェアオフィスがあることを聞いたんです。一度見学させてもらって、固定で働く場所を探していたので、ちょうどぴったり。しかも、下にクラフトビールがある。
食堂の内装はそのまま、中身だけ入れ替える
写真|じねんと食堂
入居して、二人は店の客と店の人という関係から、同じ建物の隣人になりました。事業の話はどこから始まったのですか。
徳山 名刺交換をさせてもらったときです。門田さんから、飲食関連で社内にいくつか課題が上がっている、という話があって。我々のノウハウやスキームでお手伝いできることがあれば、ぜひ一度お打ち合わせをと。JAM BASEの会議室をお借りして、話を聞かせていただきました。
門田 伏見 力の湯の中に「じねんと食堂」という食堂があって、直営でやっていたんです。そろそろテナントに任せたいという気持ちがなんとなくあった。そこにちょうど出会いがあって、一度相談してみようと。
徳山 実際にお話を伺うと、直営で続けるか撤退するかを、社内でオープンに議論されている段階でした。そこで、我々であればこういうことができます、という話をさせてもらいました。
favyのことは、ご存じでしたか。
門田 まったく(笑)。ただ後から聞くと、東京出張のときに八重洲で使っていた店がfavyさんだったりして。知らないうちに利用していた。面白いなと。
社内では、どう決まったのですか。
門田 うちはスパ・サウナ事業を長くやってきて、堅実に積み上げてきた会社です。その分、新しい発想を持ち込める人は多くはない。ただ幸い、代替わりした若い社長が今のマーケット事情に精通していて、話が早かった。社長と私で、「favyさんにお願いしてみようか」とトントン拍子でした。
具体的には、どういう組み方をしたのですか。
徳山 じねんと食堂の運営を、我々が受託するかたちです。昨年11月26日、「いい風呂の日」にリニューアルオープンしました※5。すでに飲食店として営業していた場所なので、内装や設備はすべてセットアップ済み。大掛かりな改修や開発は伴わず、中のソフトの部分、つまり運営のノウハウと飲食店のネットワークだけを我々が持ち込む。中身だけをバージョンアップするチャレンジです。
新しいじねんと食堂には、和歌山の灰干し魚を焼く定食店と、石焼き焼きそばの専門店が入りました。注文はスマートフォンから。シェア型フードホールで培った仕組みを、温浴施設にそのまま持ち込んだ形です。
徳山 我々にとっても初めての形式でした。これまでは商業施設との取り組みが多かったんです。施設を自ら運営している企業と組むのは今回が初めてで、チャレンジの機会をいただいています。
人も、メニューも、仕入れも、手放した
始まって1年弱※6。門田さんから見て、どうですか。
門田 まだ、私が思い描いているところまでは行っていません。ただ、明らかに進歩はしています。裏事情を言えば、これまでは人の管理がいちばん大変だった。昔ながらの食堂をやってきた方々に、新しい温浴施設の食堂のあり方を伝えようとしても、なかなか思う方向に向かなかった。ずっと悩んでいたところにfavyさんが入って、意思疎通ができるようになった。自分の思い描くものを、ある程度落とし込んでもらえる。
手放したものも、大きい。
門田 人を管理しなくていい、メニュー開発をしなくていい、仕入れもしなくていい。非常に身軽になりました。これからは、お客様の満足度をどう高めるかを建設的に議論しながら作り上げていく段階。第1フェーズとしては、うまくいっていると感じています。
徳山さんの側からは。
徳山 消費者としても、飲食体験が温浴体験につながっていることは認識していました。でも実際に取り組んでみて、温浴体験に飲食という要素がどれだけ大きく関わっているかを、支援する側として改めて痛感しています。だからこそ、より良い温浴体験のため、他の温浴施設との差別化のために何ができるか。我々からもっとアウトプットして、メゾネットの皆さんと建設的に対話しながら作っていく必要がある。
お互いの印象は。
門田 最初から、仕事に対する熱量がすごくある方だと分かっていました。信頼できる方です。
徳山 信頼していただいていることは強く感じています。だからこそ、成果としてどう恩返しするかを軸に考えています。社会人の先輩として、我々のパフォーマンスが追いついていないときは厳しいフィードバックをいただくこともある。それを真摯に受け止めて、どう改善して積み上げていくか。難しいところでもありますが、楽しみながらやるべきことだと思っています。
JAM BASEだから実現できた、と言えますか。
徳山 言えます。出会いのきっかけもそうですし、この取り組みを成立させるための会話は、ずっとJAM BASEのスペースを使わせてもらってきた。JAM BASEがなければ出会いもなかったし、取り組みのスピードももっと遅かった。もしかしたら今も実現していなかった可能性があります。
スーパー銭湯は、現代版の公民館
これから、二社で。
徳山 まだ具体的に走ってはいないんですが、メゾネットさんは普通の温浴施設では見ない取り組みを、先進的にされている会社です。クラフトビールのイベントをやったり、駐車場スペースを活用した車中泊で新しい周遊圏を作ったり。食堂運営にとどまらず、別の領域で一緒に面白いことができるのが理想です。
門田 「スーパー銭湯」という言い方は、僕はもう古いと思っていて。大きな銭湯というだけではなく、憩いの場、地域の交流の場、拠り所であってほしい。言ってみれば、現代版の公民館です。皆さんが求めて集まってきて、仲良くなる。温泉という軸は必要ですが、それ以外にもイベントを重ねて、いろんなお客さんが集まる場にしたい。そこに食がもっとつながっていけば面白い。イベントのところで、favyさんとまた接点ができたらと思っています。
門田さんは、空間をつくる側でもあります。JAM BASEはどう見えますか。
門田 統一感が、ある意味ないところが好きです。フロアごとに雰囲気が違う。あと、私にはあまりできない「無駄なスペース」を作るのがうまい。私は何でも詰め込んでしまう癖があるので、空間の使い方はすごくうまいなと。
最後に。JAM BASEで、次はどんな人と出会いたいですか。
徳山 食のフロアを運営するには、いろんなステークホルダーの関わりが大事です。現場でサービスを提供する飲食事業者はもちろん、新しい商品や食材を卸してくれる業者さんも含めて、いろんな方の協力で成り立っている。飲食事業者に限らず、広い意味で食に関わる方と出会いたいです。
門田 私は逆に、「こういう方」というのがなくて。会ったことのない方と、どういう接点で何が生み出せるかを考えるのが好きなんです。まったくの異業種と知り合って、一緒にできることを考えていきたい。
イベントには、あまり出ないと聞きました。
門田 出ないとダメなんですけどね。ジェネレーションギャップを感じてしまって。これは課題です。自分で壁を越えていかないと。
では、次に声をかける人のために。いつもどこに?
門田 6階の西側、窓際のソファです。
声をかけても?
門田 もちろん。自分は、基本的には社交的だと思っているので。
※1 株式会社メゾネット … 1998年設立、京都市中京区。不動産賃貸、駐車場運営、スパ・サウナ、フットサル、飲食、農産物直売、温泉販売、プライベートサウナ事業を展開。企業理念は「京都の新しい歴史をつくる」。https://mezone.co.jp/
※2 awa awa KOBE … 神戸市中央区のHAT神戸にある天然温泉スパ&サウナ。「HATなぎさの湯」を2025年10月23日にリニューアルオープン。館内にクラフトビール醸造所「PAINT PALETTE BREWING」を併設。
※3 株式会社favy … 2015年設立、東京都新宿区。シェア型フードホールの運営、飲食店向けモバイルオーダー・サブスクリプションシステム、グルメメディア「favy」などを手がける。2019年からシェア型フードホールの開発運営を開始。https://favy.co.jp/
※4 re:Dine 大阪 … 2024年9月6日、JAM BASE1階に開業したシェア型フードホール。5店舗・85席。モバイルオーダー・完全キャッシュレス。https://redine.jp/osaka
※5 じねんと食堂 … 「伏見力の湯」内のレストラン。2025年11月26日、favyの運営受託によりリニューアルオープン。favyがシェア型フードホールのノウハウを温浴施設に導入した初の事例。
※6 取材は2026年8月時点。
