公園の中にいるような、人と緑と一体化した建築をつくる
2021.02.16
2021.02.16
大阪駅という国内有数のターミナル駅の面前で新しい街が生まれようとしているうめきた2期地区。都市公園を中心にオフィスやホテル、住宅、中核施設や商業施設など、さまざまな用途や機能を備えた建築群が、緑と一体となって出現する。「ビルではなく、地形をつくる」という建築コンセプトをもとに、これまでにない街の設計を手掛ける日建設計と三菱地所設計のふたりが語るのは、エリアとしての個性を持つ、大阪ならではのまちづくりへの考え方だ。
「GGNから提案された『大阪本来の豊かに潤った大地、生命力あふれる大地のデザイン』というコンセプトは、我々も大変共鳴するものがありました。建築を手掛ける上でも、公園の隣にある建物という考えではなく、本当の緑を感じられる躍動感のある空間をつくりたいと思っています。私たちは『Park FrontでもPark Viewでもなく、In the Parkである』という考え方で、ただ公園を眺めるのではなく、まさに公園の中にいるような一体化した建築をつくる、ということを最大のテーマとしています」と日建設計の勝山太郎さんは話す。 「いくつものビルがあるうめきたでは、その正方形のユニットのキューブをいろんな角度に向けて置いたり積み重ねたりしていくことで、すき間や空間など、多様な“間”を生み出すことがテーマとなっています。その“間”に緑や光、風などの自然の要素が入り込み、人間の五感を刺激してくれるような効果を実現しようとしています。また、屋上庭園やピロティもずらして重ねることで多層的になってくるので、ビルの高い位置からでも緑を間近に感じることができます。他にも建築の壁面自体を緑化することも考えたりと、公園と建築の繋げ方にはいろいろな可能性があり、多くの価値を生むと思います。『In the Park』として、建築と人と緑の関係を自然につくっていけたらいいなと思っています」
三菱地所設計の米田充治さんも続ける。「最初にGGNから出てきたスケッチのひとつに敷地全体が深い緑に覆われている森のような絵があって、面白いなと思いました。どこにいても公園の存在を感じられるよう、たとえば公園側にルーフトップテラスのような屋外のスペ-スを設けたり、商業施設の中にいてもパノラマの緑が見えるようにしたりするなど、公園の中に自分たちがいると感じられるような仕掛けを考えています」。また必ずしも緑だけでなく、石や木、ガラスなどの自然を想起させる素材使いや、地層のようなイメージなど、ひとつひとつのビルのキューブごとに個性を持たせつつ、それらが群として集まった時に統一感を持たせるようなつくり方をしているという。「ビルではなく、地形をつくる」というコンセプトもユニークだ。「北街区と南街区にそれぞれ特徴的な空間をつくろうとしています。北街区では吹き抜けを介して内部空間が縦方向にスパイラル状につながっていくような設計があったり、南街区の商業施設は約150mのいろいろな表情のファサードが続き、まるで渓谷の中を歩いているような感覚を味わえたりと、敷地全体をランドスケープで捉え、積層された空間の中で人が出会うなど、何かしらアクティビティが生まれるようになるよう思い描いています」
「うめきたには大阪らしいエッセンスも取り入れたいと思っています。たとえば、もともと大阪の街にはエリアごとにアイデンティティとなる通りや筋があって、それらには名前がついていて、エリアの個性となっています。うめきたにもグランフロント大阪との境になる南北通り『シンボル軸(仮称)』をつくり、銀杏並木で重厚な景観となる予定です」と勝山さん。大阪駅から梅田スカイビルへとつながる、街の中央を東西に貫く『にぎわい軸(仮称)』も、うめきた2期を印象づける通りになるだろう。「これだけ大きなターミナル駅の前に、公園を中心として広がる開発というのはうめきたならでは。そこに緑や自然を感じさせる建築、それら建築群が織り成す面的なエリア、そして街の顔になるような通りなども加わり、ここにしかない個性になるでしょう」と米田さん。自由でエネルギッシュな大阪だからこそ生み出せる、これまでにない新しいまちづくりに期待だ。
写真:内藤貞保 文:脇本暁子