3つのホテルが贈る、記憶に刻まれる滞在を

2021.12.13

テーマ:ホテル

国際的なイノベーション拠点として、世界に発信する新しいまちを開発している「うめきた2期」。4.5ヘクタールの都市公園を取り囲むように3つのホテルが建設され、北街区は2024年夏、南街区は2025年に開業する予定だ。みどりと共生する心地よい至福の滞在をかなえるために、ホテル部門を担当する事業者たちの思いとは。 「うめきた2期には多種多様な施設・機能・エリアが誕生し、多くのお客様が訪れます。2023年春にJR西日本が開業するうめきた(大阪)地下駅は、関西国際空港から直結するためアクセスが良くなり、海外からもたくさんのお客様が見込めます。国際会議場などのMICE施設もあり、富裕層のお客様からビジネスやレジャー目的に訪れるお客様まで幅広い層の方々の舞台でありたいです。そうした思いから3つのホテルカテゴリーを導入しました」と企画提案コンペの実施に至るまでの背景をオリックス不動産の狩俣洋介さんが語った。 3つのカテゴリー分けはこうだ。ひとつは世界の富裕層を魅了するスーパーラグジュアリーホテル、もうひとつはイノベーション拠点に集うミレニアル世代などクリエイティブな発想を持つ方々をいざなうライフスタイルホテル、最後はビジネスからレジャーまで幅広く利用できるアップスケールホテルと、個性豊かな3つにカテゴライズされた。 「ホテルのブランド選定に関しては、ホテルカテゴリーごとの企画提案コンペを実施し、うめきた2期のテーマに賛同して前向きな反応をいただいたホテルオペレーターに、企画提案をいただき、事業者の皆さんと時間をかけて議論を重ね選定いたしました」と振り返る。

狩俣洋介さん/オリックス不動産株式会社(投資開発事業本部 大阪営業部 うめきた開発推進室 プロジェクトリーダー)

スーパーラグジュアリーホテルには、世界的ホテルチェーンであるヒルトングループの最上級ブランド「ウォルドーフ・アストリア」が開業すると言う。 「ウォルドーフ・アストリアは1893年にニューヨークで開業して以来、歴代の大統領や各国の首脳、世界で最も有名なエンターテイナーが滞在し、現在もその時代のリーダーや実業界のトップ、セレブリティ、文化人が集うホテルとして知られています。宿泊客は素晴らしい接客を受けられる、『True Waldorf Service』を求めて滞在していると感じます」と今回のプロジェクトに際し、多数のホテルを視察した狩俣さんが言う。

南街区に出店するスーパーラグジュアリーホテル「ウォルドーフ・アストリア大阪」。歴史あるブランドを象徴するラウンジ&バー「ピーコック・アレー」も計画中。

2年前にウォルドーフ・アストリア・バンコクに滞在した積水ハウスの神門英昭さんは「エグゼクティブなレセプションフロアでシッティングチェックインができ、バンコクの街並みを一望するインフィニティプールが素晴らしかった。朝食は美しい眺望でゆったりとした雰囲気の中、洗練されたサービスを受けることができるなどたいへん優雅な滞在ができた」と、ホテルの設えや世界のVIPを魅了するホスピタリティに太鼓判を押す。 「ウォルドーフ・アストリア・バンコクには、最上階のレストランから、不思議な螺旋階段を上がると一見壁に見える入り口のシークレットバーがあるなど、『特別なおもてなし』に驚きました。私たちもうめきた2期ならではの特別なおもてなしを考え、人々の記憶に刻まれる体験を提供したいと思っています。もちろん、ウォルドーフ・アストリアを象徴するシンボリックな大階段や大きな時計、ニューヨークの華やかな逸話を持つラウンジ&バー『ピーコック・アレー』なども登場します」と阪急阪神不動産の後藤祐也さん。

神門英昭さん/積水ハウス株式会社(開発事業部 設計担当 部長)

後藤祐也さん/阪急阪神不動産株式会社(開発事業本部 うめきた事業部 副部長)

ライフスタイルホテルは、同じヒルトンが擁する、2014年に誕生した新ブランドの「キャノピーbyヒルトン」だ。 「うめきた2期の“みどりとイノベーションの融合拠点”というテーマに非常に親和性が高いホテルになると感じています。宿泊したワシントンでは、地元のコーヒーの提供や近隣住民が気軽に訪れる仕掛けとして地ウイスキーを無料でふるまうなど、その土地の地域性をとても大事にしており、宿泊するためだけではないホテルの使い方を提案していました。ほかにもアイスランドや中国などその土地らしさを感じさせる地域密着型ホテルは、ひとつとして同じホテルはありません。大阪の文化をキャノピーらしいデザインに落とし込むことを検討しています」と狩俣さん。

北街区に出店するライフスタイルホテル「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」。大阪ならではの特性を、空間やサービス、フードにデザインし、シンプルかつ快適な空間を楽しめる。

3つ目のアップスケールホテルには、阪急阪神ホテルズが開業する。メインターゲットはこだわりを持つ旅慣れた大人のツーリストたちだ。 「観光やビジネスで訪れたお客様に、“名所観光”だけではなく梅田の文化体験や街全体を楽しむ旅の拠点にしてほしい。また、まちのテーマのひとつである“ウェルネス”も重要視しています。同じ建物の低層商業フロアに都市型スパを計画しております。世界が注目するような先進的なスパをラスイートさんが企画されており、ホテルのお客様にいままでにない『おもてなし』を体験いただけることを楽しみにしております」と後藤さん。

国内外のレジャー・ビジネスといったさまざまな需要に応えるアップスケールホテル。1958年に創業して以来、幅広いタイプのホテルを展開してきた「阪急阪神ホテルズ」が、運営を行う。

「うめきた2期が目指す国際的なイノベーションの拠点として、ホテル事業は重要な要素です。3つのホテルを合わせた延床面積は約80,000㎡あり、これはオフィス面積の次に大きな規模になります。またひとつの開発において3つのホテルを同時に整備するのは、ほぼ前例がないということからも、ホテルに力を注いでいることを感じていただけたらと思います。コロナ禍を経験して、宿泊だけではない多種多様なサービスの提供などが加わり、ホテルの可能性も広がりました。コロナ禍を経た時代にホテルを開業するため、コロナを前提にした新しいホテルをつくることができるのは、3つのホテルの強みになると期待しています」とさらに意気込みを語る後藤さん。 「ヒルトンの2つの世界的ブランドと梅田の地で長い実績のある阪急阪神ホテルズがお互いの特徴を発揮しながら連携し展開していくのを期待しています。それがまちの賑わいにつながっていくことになるでしょう。また都市公園は公共の場であるけれど、各ホテルのプライベートガーデンとしてのアクティビティにも期待しており、これら3つのホテルもうめきたの歴史と風景をつくっていくことを願っています」と神門さん。 みどりと建築物が一体化するランドスケープを持つ、新しいまち「うめきた2期」。ホテルと豊かなみどりが織りなす景観は、未来の大阪を象徴するものになるにちがいない。

写真:内藤貞保 文:脇本暁子