公園が求心力となる、未来都市の中核機能が目指すものとは
2022.11.28
2022.11.28
関西最後の一等地であり、ターミナル立地における日本最大級の開発で注目されているうめきた2期。「みどり」と「イノベーション」の融合拠点をテーマに4.5へクタールの都市公園を中心とした新しい街の中核機能とはどういったものだろうか。うめきた2期における中核機能の事業者のリーダーを務めるオリックス不動産とサブリーダーの阪急阪神不動産の担当者に話を聞いた。
うめきた2期における中核機能について、オリックス不動産の西野智博さんはこう説明する。 「中核機能とは、イノベーションに資する施設(以下、中核施設)、中核施設の管理運営組織、イノベーションの支援を行っていく支援組織の3つの総称です。中核機能の検討においては、施設計画、運営計画、リーシングなどの不動産業務はもとより、法人の管理・運営、イノベーションに資するイベント・プログラムや支援内容の検討、ネットワークの構築など多岐に渡ります。それらの事業者としての検討を、当社がリーダーとして、阪急阪神不動産さんがサブリーダーという形で推進しています」 続けて、阪急阪神不動産の橋本英仁さんは、うめきた2期における中核機能が目指すものをこう説明する。 「うめきた2期の中核機能が目指すのは、都市公園を中心に、この場の求心力によって集う多様な市民の接点を生かした未来型のライフデザイン・イノベーションの創出を促すことです。ライフスタイルやウェルビーイングといったさまざまなキーワードがありますが、これらに限らず人が健康で豊かでいるための製品やサービスを生み出していく街にしていくことを目指し、それを整備していきます」。オリックス不動産の西野智博さんが続ける。「とはいえイノベーションを起こしていく上で民間だけでは難しい側面があります。企業、大学研究機関、スタートアップなどイノベーションの担い手に加え、行政・経済界や一般市民をはじめ産・官・学の多様な人々と“共に考え、一緒に創る”ことを通じてはじめて成せるのだと思います。そうした背景から、中核機能のコンセプトとして“with イノベーション”を掲げ、官民一体となってイノベーションを支援していくことにしました」 イノベーション支援の実現にあたり、2017年から大阪府、大阪市、公益社団法人 関西経済連合会、大阪商工会議所、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)、一般財団法人 大阪科学技術センター、開発事業者で構成される「みどりとイノベーションの融合拠点形成推進協議会」の場で議論を重ね、今年9月13日には中核機能におけるイノベーション支援組織が設立された。それが、一般社団法人うめきた未来イノベーション機構(以下、U-FINO)だ。また、同じタイミングで中核施設の管理・運営組織として一般社団法人コ・クリエーション・ジェネレーター(以下、CCG)も設立した。 「2法人のそれぞれの役割ですが、U-FINOは大阪都市計画局、関西経済連合会、大阪商工会議所も参画する官民一体によるイノベーションの支援組織で、事業者を代表して阪急阪神不動産がU-FINOの運営の役割を担います。一方のCCGはその運営の役割をオリックス不動産が担っています。このように役割を分担してはいますが、相互に連携しながら両社が協力して中核機能全体を盛り上げ、運営し、活性化させていきます」と橋本さん。
中核施設は主に北街区賃貸棟に集積しているが一極集中するわけではないと西野さんは断りを入れてから、公園と共存する中核施設の構想を語ってくれた。 「公園を訪れる一般の方々との接点をどう増やしていくかというのがひとつの課題でもあります。確かに北街区賃貸棟に中核施設は集まってはいますが、一カ所に集中するのではなく南街区や公園内にもいくつか中核施設を点在させて、街に溶け込んで多様な市民との接点があるように、街全体のあらゆる所で中核機能の営みを展開していきます。また、北街区賃貸棟の中核施設にしても、活動混在型空間という考え方に基づき、さまざまな人たちと交流ができるよう4層吹き抜けの交流サロンの設置や、共用部を充実させたり、オフィス系のものから商業系まで混在するような配置にすることで相乗効果を狙っています。運営していく上では非効率かもしれませんが、あえてチャレンジブルな施設を計画しています」
さらにうめきた2期では、イノベーション創出に向けスタートアップ支援にも力を入れていく。2020年7月には内閣府が進める「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」において、京阪神が「グローバル拠点都市」に選定された。その重要なエリアであると位置づけられているのが、うめきた2期だ。大阪、京都、神戸が一体となって、国と連携しながら世界に匹敵するスタートアップの創出支援に取り組んでいく。 「中核施設で活動したりビジネスを進めるのは、既存の企業に加え、大学研究機関やスタートアップなど多様な主体です。その中でも、これまでにない新しいサービスや製品などを生み出すという意味で、スタートアップは非常に重要な位置づけとなります。うめきた2期は関西でも非常にアクセスの良い場所にあり、京阪神という関西圏の中でのハブとなる立地です。これまで京都、大阪、神戸各都市それぞれにあったすばらしい技術や知恵、人、情報を集積化してみんなの幸せにつなげていくこともこの街の役割だと思っています」と橋本さんは意気込みを見せる。 西野さんも新しい都市が果たす役割をこう語る。「2025年には大阪・関西万博が開催されますし、今年4月には世界に先駆けて未来の生活を先行実現する“まるごと未来都市”を目指すスーパーシティ型国家戦略特別区域にも正式に指定されました。うめきた2期はそうした時代的な流れと機運を使って、京阪神のいままで“点”であった活動を“線” につなげ、さらに面としていくことで日本の、いずれはアジアのハブとしての役割に寄与できたらと思っています。ただ、うめきた2期の中核機能が単体で頑張ればいいという話ではなく、さまざまな方々がここを拠点として活動を共有し、新しいものを市民と共につくっていくというビジョンがないと実現できません。“with イノベーション”という中核機能のコンセプト通り、皆さんと一緒につくり上げていくものなのです」 緑溢れる公園を求心力に多様な市民とイノベーションを共創する。アジア圏を代表するイノベーションハブ都市への胎動は始まったばかりだ。
写真:内藤貞保 文:脇本暁子