共創によるイノベーションで、関西経済の発展に貢献
2023.09.14
2023.09.14
パナソニックグループは、2022年4月にパナソニック ホールディングス株式会社を持株会社として8つの事業会社と関係会社で構成される事業会社制に移行した。創業の地である関西では、2025年の大阪・関西万博、2030年の大阪府・大阪市スーパーシティ構想などの大規模都市開発が見込まれており、同社は、関西活性化に向けてグループ全体で取り組む「関西25・30プロジェクト」を始動。複数の事業会社横串機能を担い、プロジェクトマネジメントも行うパナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 ビジネスソリューション本部の宮原智彦本部長に話を聞いた。 「パナソニックグループは1918年の創業以来、家電メーカーとして確固たる地位を確立してきましたが、現在は家電メーカーとしてのモノづくりの技術を活かし、BtoBパートナーと共創しながらソリューションやサービスを提供するビジネスモデルに重きを置いています。そんな中、私が所属するビジネスソリューション本部は、これまでも東京オリンピック・パラリンピックといった国際イベントや国家的プロジェクト、自社工場跡地を活用したまちづくりであるサスティナブル・スマートタウン(SST)、Fujisawa SST(神奈川県藤沢市)、Tsunashima SST(神奈川県横浜市)、Suita SST(大阪府吹田市)を通じて新規事業機会を生み出す取り組みを進めてきました。この関西25・30プロジェクトもそのノウハウを活かし、グループ全体で推進しています。その中で、グループの技術やソリューションも活かして産官学民といったさまざまな方々と共創しながらやっていきたい。そういう想いを込めて、このプロジェクトのコンセプトは、関西共創にちなんで “歓彩共創”を掲げました」
開発中のグラングリーン大阪の隣接地で1000日間にわたって行われた実証実験空間「うめきた外庭SQUARE」。その運営パートナーとして参画した理由について宮原さんはこう話す。 「第一に、うめきた先行開発区域であるグランフロント大阪の開発の際に、コーポレートショールーム『パナソニックセンター大阪』を進出させていただいたご縁があることです。当時は家電が主力事業でしたが、今のパナソニックグループは、BtoBビジネスを主力としており、この地で新たにBtoBビジネスのパナソニックグループとして存在感を示したいという想いがありました。第二に、うめきた外庭SQUAREが、未来のまちづくりに向けた実証実験フィールドとして、 “「みどり」のリビングラボ”というコンセプトを掲げていることです。モノづくりやサービスの開発プロセスにおいて市民やユーザーを巻き込みながらニーズを拾い上げ、そのニーズに沿って新たな技術やサービスを共創していく。この狙いに共感したからです。私たちもSSTのまちづくりを通じて住民との共創で、「価値を感じる側」から実証したものを事業につなげていくことを大事にしていたので、いい機会をいただけたと参画を決めました」 2022年に同社は次世代アートをテーマとした空間演出による観光送客実証実験や、スポーツの体験イベント「みどり×スポーツ OSOTOでSPORTS」を行った。 「うめきた外庭SQUAREで行った実証実験のひとつは、京都をテーマにした照明・映像・ミストによる空間演出で京都観光を現地と離れた場所でもリアルにバーチャル体験ができるといった内容です。大阪・関西万博や、スーパーシティ構想を見据え、インバウンド向けの観光体験価値を高める観光ソリューションとして旅マエにバーチャル上で旅先を経験。その後、実際に現地を訪れて旅ナカで体験をしていただき、旅アトにもバーチャル上でその思い出を振り返る。もしくは、そこを訪れたからこそ欲しいと思えるお土産を後で購入する手段として利用していただく、など。このような観光DXの活用により、旅先での体験価値をより一層高めることができることを確認できた実証であったこともあり、インバウンドが見込まれるグラングリーン大阪でも貢献できる、そんな価値実証だったと手ごたえを感じています」
ほかにも、紙に描いた乗り物の絵が立体になって走り出す、躍動感あふれるカーレースが楽しめるバーチャル×リアルのe-スポーツ「SKETCH RACING」やアバターを介したリモート接客で業務の効率化・省人化に役立つ遠隔コミュニケーションシステム「AttendStation®」。さらに、ライブ中継・配信コンテンツを会場演出の「撮る・創る・映す」をクラウドベースで映像制作を省コスト・省スペースで実現するプラットフォームKAIROSを活用した「ガンバ大阪のパブリックビューイング」では、臨場感あるライブ映像を屋外の大型ビジョンで配信し、開催期間中、多くの注目を集めた。
2024年夏に先行まちびらきを迎える「グラングリーン大阪」への想いを宮原さんはこう語る。「創業者の松下幸之助が1918年に会社をスタートさせた大阪市福島区大開に近いということ。さらに、日本経済の急速な発展による弊害として人口の集中や交通事故が表面化した1964年に、官民一体の取り組みとして大阪駅前に歩道橋を寄贈したということで深いご縁を感じる場所でもあります。イノベーターであり、ベンチャースピリットにあふれた創業者の想いと、社会課題に向き合い、地域貢献への取り組みの基となった歴史あるこの地で、当社の新しい技術なりソリューションを織り込みながら、グラングリーン大阪に集う全ての人々や企業とともに創造的・革新的なイノベーションを起こしていけたらと思っています。また、そういったことができる緑豊かな魅力ある場所だとひしひしと感じていますので、今からまちびらきが待ち遠しいです」
2025年には、大阪・関西万博にパナソニックグループパビリオン「ノモの国」を出展する。コンセプトは「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」。 「当社はモノづくりのメーカーということで、単にモノだけにこだわるのではなく、心も見つめていくべきという創業者の『物心一如(物と心が共に豊かな理想の社会)』の思想をパナソニックグループのパーパス(存在意義)としています。さまざまなモノは、ココロの持ちようで捉え方が変わり“心の写し鏡”であるという考えから、“モノ”を反対から読み『ノモ』と名付けました。また、体験を通してα世代の子どもたちに感じてもらえるパビリオンとなります。家庭で使用済みとなった家電が分解されて主要部材になったり、工場や世界で廃棄・焼却されていた端材や廃材がアップリサイクルされたり、資源循環をリアルに感じていただくことができます。パナソニックグループでは、物と心がともに豊かな理想の社会の実現を目指し、『幸せの、チカラに。』をブランドスローガンに、地球環境問題と、一人ひとりの生涯の健康・安全・快適にお役立ちを果たすことを目指してまいります」
「関西25・30プロジェクト」の中で、「Suita サスティナブル・スマートタウン(Suita SST)」の取り組みもパナソニック主導で行われている。3年をかけプランニング、2018年に開発着工して、2022年4月にまちびらきを行った。 「当社は家電メーカーとして、くらしの価値から家電を生み出してきた背景があります。このくらし起点という発想で、100年後のスマートライフを想定したうえでインフラなどを考えています。中でも、まちづくりで当社が一番大事にしているのは、住民のみなさんと一緒に街をつくっていくということです。まちびらきをしてまだ2年目のSuita SSTではありますが、Fujisawa SST(2014年まちびらき)やTsunashima SST(2018年まちびらき)のノウハウを活用し、健康と環境エネルギーを発信しながら、いろいろなサービスを産官学民の共創でグラングリーン大阪でのWell-beingへの取り組みにも寄与していきたいと考えています」
最後に「関西25・30プロジェクト」の今後の展望について伺った。 「このプロジェクトを通じ、上方の文化が江戸に伝わったように。大阪で初めて導入された動く歩道や自動改札機が日本各地から世界に広がっていったように。そういった歴史を持つ大阪で起こしたイノベーションが日本全国へ、そして世界へと広がっていくように、大阪・関西企業の一員として、パナソニックグループの技術とソリューションで関西経済の活性化に貢献していきます」 パナソニックグループの発想の中心に常にあるのは「人」。街に集う一人ひとりに寄り添う視点で価値を生み出す新たな技術やイノベーションから今後も目が離せない。
宮原智彦(みやはら・ともひこ) 1989年に松下電器産業株式会社入社。2009年パナソニック株式会社 システム・設備事業推進本部 事業推進グループ グループマネージャーを経て、Fujisawa SSTマネジメント株式会社の社長、ビジネスソリューション本部 本部長を歴任。2022年10月から現職、本プロジェクトを推進するとともに、企業や自治体との共創による事業推進にも注力している。 |
写真:東谷幸一 文:河野好美