
2025年3月、オープンして半年が経った「JAM BASE」にて、トークセッションイベント【Serendipity JAM】を開催。モデレーターを、コ・クリエーションジェネレーター佐々木一洋が務め、「JAM BASE」の設計開発・空間デザインを担当した日建設計・山本恭史さん、surDL(サドル)・稲垣誠さん、阪急阪神不動産でU-FINOも兼務する橋本英仁さん、世界最大のアクセラレーター、Plug and Play Japan・川口雄大さんが参加しました。テーマは、“偶発性デザイン”。場の“開発者”ד活用者”というクロスした視点で「JAM BASE」開発の裏側にある思想と、未来への希望に触れる貴重な機会となりました。 本レポートでは、トークセッションで印象的だったキーワードをいくつか紹介します。

左から佐々木一洋・山本恭史さん・稲垣誠さん・橋本英仁さん・川口雄大さん
「グラングリーン大阪」開発は、セレンディピティだらけ。

「グラングリーン大阪の開発には、複数の設計チームやデザイナーが参加していました。この巡り合わせこそが、そもそもセレンディピティだったと思います」語ったのは、JAM BASEの設計を担当した山本さん。 「開発事業者9社を中心に、設計、建築、デザイン、運用など数十の個性ある企業が、ごちゃごちゃになって進んだので、新しい出会いや、発見は相当あったなぁ」と佐々木も。 そもそも、グラングリーン大阪の開発自体が、セレンディピティに満ちていたのです。 「今までの駅前開発にない価値を見出せているという視点では、グラングリーン大阪の開発は成功だと思っています。」という山本さんの言葉は、原点を大切にせよ!というメッセージだと感じました。
“クエスチョン”と“ビックリマーク”

「セレンディピティは、偶然と偶然を結びつける、壊す、組み合わせるものだと思います」 そう語るのは、JAM BASEの空間デザインを手がけた稲垣さんです。ヒントになったのは、かつて担当したプロジェクトで出会った科学技術の技術者たち。 「計算された偶然に触れることが、人間の感性を刺激し、心地よい違和感(不協和音)を生み出す」——そんな稲垣さんならではの表現が胸に刺さります。 また、空間をデザインするうえで「日常にはない、“クエスチョン”と“ビックリ”が必要だと思っています」とも。驚きを与えること、意図的なミスマッチを仕掛ける遊び心こそが、セレンディピティのトリガーになるのだと話してくれました。 4階〜9階をつなぐ巨大階段、本棚に設置された隠し扉、各階のデザインがすべて異なるトイレ……。“クエスチョン”と“ビックリマーク”に満ちた空間であることに、改めて気づかされます。まだ訪れたことがない方は、ぜひ一度、その空間を体感してみてください。
“コミュニティ”と“遊び”

U-FINOとして、また阪急阪神不動産の立場として、スタートアップと企業のマッチングイベントを手がける橋本さんは、「待っていてもセレンディピティはやってこない」からこそ、「リアルな場」と「ソフトな仕掛け」が不可欠だと語ります。 場所の設計だけでなく、コミュニティの形成やイベントの企画・運営に取り組んでこそ、偶然の出会いを促すことができるのではないか——。 橋本さんはそう考えています。また、「セレンディピティには、一定の“仕掛け”と“母集団”が必要」であり、そのためには、オフラインとオンラインを組み合わせた「一定のテーマをもつイベントを、継続的に開催していくことが大切」とも話してくれました。 「ワンフロアの中にオフィスも、企業パートナーも、スタートアップも——とにかく隔たりをなくすことにこだわって設計したんです」Plug and Play Japan渋谷オフィスのリニューアル設計について話してくれたのは、今回JAM BASEを使う外部企業メンバーとして参加いただいた川口さん。JAM BASEと同じく、スタートアップと企業によるオープンイノベーションを促進するPlug and Play Japan渋谷オフィスの裏側を紹介してくれました。 コンセプトは“Playground”。シリコンバレーにある本社を参考に、集う人々が遊び心をもって過ごすことで、偶然の出会い(ビジネスの種)が生まれ、異業種が交わることができるのだといいます。 それはオフィスに限らず、スタートアップと大企業の「あいだ」にある“境界のない空間”をつくること。まさに、“遊び心”が交わりの設計図になる——そんな視点が、オープンイノベーション推進のカギになるのかもしれません。 今回のセッションは、これまでのJAM BASEの“ハード”=場づくりの狙いを知るとともに、これからのJAM BASEの“ソフト”=使い手たちによる試行錯誤とアップデートによって、“生きた空間”になっていくのだと、改めて感じる時間となりました。
ランドスケープ・アーキテクト鈴木マキエさんも登場した第二部は、「イノベーションは、いっぱい飲みながら。」で公開中!

イベント後半は、音声配信プラットフォームVoicyの人気番組「イノベーションは、いっぱい飲みながら」の公開収録として展開されました。 ゲストは、第一部につづき稲垣佑哉さん(surDL)、川口雄大さん(Plug and Play Japan)。そして、サプライズゲストとして、シアトルを拠点とするデザインファームGGN所属のランドスケープアーキテクト鈴木マキエさんにも参加いただきました。グラングリーン大阪の北・南公園のデザインを担当し、世界的な都市開発や大学施設、テック企業キャンパスなどを多数手がけられています。 モデレーターは、佐々木一洋と、第二部から登場したU-FINO渡邉秀斗さんと、Voicyナビゲーターの奥田涼です。

左から渡邉秀斗さん・鈴木マキエさん
空間デザイナー、アクセラレーター、ランドスケープ・アーキテクトという異なる領域のゲスト3名が、イノベーションに本当に必要だと思うことは?公開収録の模様は、JAM BASE Voicyで4回に分けて公開中です。ぜひ、聴いてみてください
※vol.30~32も順次公開予定です!お楽しみに!