
木村祥一郎さん
Voicyチャンネル「イノベーションはいっぱい飲みながら。」 今回のゲストは、1924年(大正13年)創業で石鹸・洗剤メーカー、木村石鹸工業株式会社の4代目社長で、Voicyチャンネル「ちいさな会社のおおらかな経営」のパーソナリティをでもある木村祥一郎さんです。

収録は<9F共用ラウンジ>で実施
木村さんが家業を手伝いはじめたのが2013年。もともとは、実父(先代)から「助けて欲しい」と頼まれたのがきっかけでした。でも、最初は数年で、学生時代に仲間と起業したIT企業に戻る予定だったそうです。しかし、「いざ現場に飛び込んだら面白くて。結局、社長に就任して、そのまま完全に木村石鹸一本になっちゃった」のです。 父と子、IT企業と町工場──なんだかドラマのような木村さんのお話を、JAM BASE Voicyナビゲーターの奥田涼と、窪庭潤、そして初登場の下山知恵が伺いました。その一部をご紹介します。
ブーイングからスタートした自社ブランド開発

木村さんが入社した当時、会社の業績は右肩下がりでした。原因の一つはOEM依存の体質。価格決定権がなく、低い利益率に苦しんでいたのです。加えて、OEM先の業績悪化が自社にも連鎖するリスクも抱えていました。一方で、気づいたことも。 「普段の生活で使っている商品を、自分たちで開発・製造できることが、新鮮で驚きでした」 この発見が、自社ブランド開発への第一歩となりました。 しかし、ゼロからのブランド開発は、決して順風満帆ではありませんでした。特に、社内の理解を得るのに大変苦労したそうです。 「2015年、はじめて開発したブランド商品を発売した初月の売上は2万円。買ってくれたのは親父でした——」 でも、転機が訪れます。社員に嫌がられながらも出店したデザイン商品に特化した展示会への出展です。 「歴史が100年ある会社で、釜焚き製法で石鹸をつくっている会社でと説明をして、展示製品の案内をしたら、めちゃくちゃいいね!と。そこで商談が次々にまとまったんです」 この成功で社員の目の色が変わり、数百社へのアプローチを経て、有名店舗に自社商品が並び始めました。子どもに「木村石鹸の商品が並んでるよ」と自慢する社員も現れ、社内の協力体制が一気に強化されました。 そして今では、ブランド事業が会社の主力になっているそうです。——誰かが脚本を書いているとしか思えない、そう感じたのは私だけでしょうか。
<心配>より<信頼>を。“おおらか”という経営哲学

木村さんは自著『ちいさな会社のおおらかな経営』でも触れていますが、経営の根底に“信頼”を据えています。そのきっかけは、IT企業時代のマネジメント経験でした。 「起業当初は“楽しい”“面白い”という感覚だけで仲間が集まり、問題は起きなかったんです。でも組織が大きくなるにつれ、管理ルールを作ると人の問題が噴出して……」 社員がサボってないか、管理職がいないと業績が上がらないんじゃないかなど、“心配”ベースのマネジメントが逆に組織を硬直化させてしまったと振り返ります。そこで改めて気づいたのが“信頼”の大切さであり、おおらか経営のベースになっていきました。 今では、社員の自主性を最大限発揮させる脱・組織図によるチームマネジメントや、自己申告による給与制度など、おおらか経営が木村石鹸ならではのユニークなカルチャーの原動力になっています。
木村さんが想う——イノベーションに必要なことって?

そんな木村さんが選んだキーワードは、《計画でいない》《トライ回数を増やす》《偶然/異物/無関係などの許容》です。 「そもそもイノベーションなんて計画できない。何月何日までに達成しようというものが、本当にイノベーションと言えるのか疑問です」 だからこそ木村さんは、計画に固執せず、トライ&エラーを繰り返す環境を整えることに重点を置きます。例えば木村石鹸を代表するシャンプー「12/JU-NI(ジューニ)」は、開発メンバーが誰に相談することもなく、独自に試行錯誤を重ねてつくっていたそうです。 「ある日、全社員が見るチャットに『すごいモノができました!』という投稿があって…」 商品化を目的とすることよりも、自分が“やりたい”という純粋な気持ちを尊重し、それに応える環境づくり優先する。とにかくトライする件数を増やすことで、その過程で起こる失敗も、経験や知見となり、他の商品開発に活かされていくのだとか。木村石鹸の品質は、まさにこの環境から生まれていることがわかるエピソードです。

そして、計画しない・できないという前提があるからこそ、社外で面白そうな人がいれば仕事になるかどうかは別として、とにかく会いに行くそうです。 「会社のデスクで作業だけしていても、イノベーティブなことはなかなか起きなくて。それよりも業界も違う、うちとはなんの縁もない人と出会って友達になったりして、一緒に何かできたら面白いよね」 ノイズに興味を持ち、フットワーク軽く動く。木村さんが選ぶキーワードから、蓋然性よりも可能性を追求する姿勢の大切さを教えてくれます。

ゼロからブランドをつくる、社員を信じることで気軽に挑戦する空気をつくる——木村さんがつくっているのは社員のみなさんの希望であり、それが木村石鹸の商品を使う人の希望にもなっているのかも、音声を編集しながらそんなことを想いました。 <あぁ、いい会社だな>と、きっと思える木村さんとのお話は、JAM BASE公式Voicyチャンネル「イノベーションは、いっぱい飲みながら。」で、4回にわけて公開中です。ぜひ聴いてください。またよければ番組をフォローしていただけると嬉しいです。
続きは順次公開予定です!お楽しみに!
<出演者プロフィール> ゲスト| 木村 祥一郎さん -木村石鹸工業株式会社 代表取締役社長 1972年生まれ。1995年大学時代の仲間数名とITベンチャー企業を起ち上げる。以来18年間、商品開発やマーケティングなどを担当。2013年6月家業である木村石鹸工業株式会社へ。2016年9月、4代目社長に就任。石鹸を現代的にデザインした自社ブランド商品を展開。OEM中心の事業モデルから、自社ブランド事業への転換を図る。 ・木村石鹸WEBサイト https://www.kimurasoap.co.jp/ ・Voicyチャンネル ちいさな会社のおおらかな経営 https://voicy.jp/channel/818319 ・木村さんのXアカウント https://x.com/yudemen